整骨院の開業準備チェックリスト
手続きと、開業日に患者さんが来る状態をつくる逆算
しかし実際に開業した先生が口を揃えて言うのは、「開けたのに、誰も来ない期間が思ったより長かった」ということ。
この記事では行政手続きと、開業日に患者さんが来る状態をつくるための逆算を整理します。
開業資金の金額目安は載せていません。物件の立地・広さ・居抜きかどうかで振れ幅が大きすぎ、平均値を書いても判断の役に立たないためです。
補助金・助成金も、年度ごとに内容が変わるため個別には扱いません。お住まいの地域の商工会議所や、よろず支援拠点で最新の情報をご確認ください。無料で相談できます。
まず、いつまでに何をするか
開業日から逆算した全体像です。物件が決まっている前提で書いています。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 6ヶ月前〜 | 物件の内見時に、保健所へ図面を持って事前相談 |
| 4ヶ月前 | 院名を決める/内装工事の契約 |
| 3ヶ月前 | ドメイン取得、Googleビジネスプロフィールの登録手続きを開始 |
| 2ヶ月前 | ホームページ制作に着手/料金・メニューを確定 |
| 1ヶ月前 | ホームページ公開、ネット予約の受付開始/チラシ準備 |
| 開業日 | 開設後10日以内に保健所へ開設届 |
| 開業後すぐ | 受領委任を行う場合は地方厚生局へ申出 |
目を引いていただきたいのは「1ヶ月前に予約受付を開始」の行です。
開業日に予約が1件も入っていない状態で開けるのと、5件入った状態で開けるのとでは、初月の売上も気持ちの余裕もまったく違います。
行政手続き:まず保健所、次に厚生局
① 施術所開設届(保健所)
柔道整復師法に基づき、施術所を開設したときは開設後10日以内に、管轄の保健所へ開設届を提出する必要があります。開業前ではなく、開業後の届出です。
一般的に必要とされる書類は次のとおりです(自治体により異なります)。
- 施術所開設届(自治体所定の様式)
- 柔道整復師免許証の写し(原本の提示を求められる場合があります)
- 施術所の平面図(各室の寸法・用途、換気や消毒設備の位置を記載)
- 付近の見取り図
- 法人開設の場合は定款・登記事項証明書
施術所には構造設備の基準があり、待合室や施術室の面積・換気・消毒設備などの条件を満たす必要があります。基準は自治体の条例によります。
工事が終わってから基準に足りないことが分かると、作り直しになります。物件を決める前、遅くとも工事契約の前に相談しておくべきところです。
このあとの受領委任の手続きで、開設届の控えが必要になります。
提出時に副本を用意して受付印をもらっておかないと、あとで取り寄せる手間が発生します。
② 受領委任の申出(地方厚生局)
健康保険の療養費を、患者さんの窓口負担分だけ受け取る形で取り扱う——いわゆる受領委任です。
これを行うには地方厚生局(都道府県事務所)への申出が必要で、施術管理者になるための要件があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 実務経験 | 柔道整復師の資格取得後、3年以上(2024年4月以降)。うち一定期間は施術所での実務であることが求められます |
| 研修の受講 | 指定団体が実施する施術管理者研修(合計16時間)を修了し、修了証を提出 |
| その他 | 現在または過去に行政処分を受けていないこと/保健所への開設届出が済んでいること |
実務経験3年と16時間の研修は、思い立ってすぐに満たせるものではありません。
研修は開催日程が限られています。「物件も決まった、あとは保険の手続きだけ」という段階で研修が未受講だと、そこから数ヶ月待つことになりかねません。
開業を考え始めた時点で、まず自分が要件を満たしているかを確認してください。
※ 要件や必要書類は変更されることがあります。最新の内容は、管轄の地方厚生局のウェブサイトでご確認ください。
③ 税務署への開業届
個人事業として開業する場合は、税務署へ開業届を提出します。
青色申告を選ぶ場合は、青色申告承認申請書の提出期限に注意してください。原則として開業から2ヶ月以内です。ここを逃すとその年は青色申告ができません。
院名は、決める前に確認を
後から変えるのが最も面倒なのが院名です。看板、ドメイン、名刺、開設届、すべてに関わります。
次のような名称は、広告規制の観点から指摘の対象になり得ます。
- 医科と紛らわしいもの:「診療所」「治療所」「治療室」「○○クリニック」「○○メディカル」
- 効果を謳うもの:「小顔矯正」「姿勢改善」などを名称の中心に据える
- 専門を限定するもの:「交通事故専門」「女性専門療院」
厚生労働省は2025年2月に「あはき・柔整広告ガイドライン」を策定しており、施術所の名称についても整理されています。
詳しくは整骨院の広告規制|ホームページに書いていい表現・ダメな表現にまとめました。院名を決める前に一度目を通しておくことをおすすめします。
Webの準備は「3ヶ月前」から
なぜ3ヶ月前なのか。理由は2つあります。
新しいドメインが検索結果に安定して出るまで、通常3〜6ヶ月かかります。開業日に公開しても、検索から人が来るのはしばらく先です
確認方法によっては、はがきの郵送で1〜2週間かかります。地図に出るまでのリードタイムを見込んでおく必要があります
地図検索は、開業直後の集客において最も効きます。「近くの整骨院」で探している人に、開業初日から見つけてもらえる状態にしておく——ここが初月の患者数を左右します。
手順は整骨院のGoogleビジネスプロフィール完全ガイドで解説しています。
開業前に決めておくこと
ホームページの制作に入る前に、次の項目を決めておくと進みが早くなります。逆に、ここが決まっていないと制作が止まります。
- 院名(正式表記・読み仮名)
- 住所、電話番号、最寄り駅からの道順
- 受付時間、定休日
- 駐車場の有無と台数
- メニューと料金(保険施術・自費それぞれ)
- 初回の所要時間と、当日の流れ
- 院長のプロフィール(開業に至った理由も)
- 院内・外観の写真
このうち「開業に至った理由」を軽視しないでください。
新規開業の院には実績も口コミもありません。患者さんが判断材料にできるのは、どんな人がやっているのかだけです。ここが書けている院と書けていない院で、初期の集客には差が出ます。
開業直後につまずきやすい3つのこと
① 予約手段が電話しかない
開業直後は院長ひとりで回すことが多く、施術中に電話が鳴っても出られません。
出られなかった電話は、そのまま他院に流れます。そしてかけ直しても、たいてい繋がりません。
ネット予約は初期設定さえ済ませれば手間がかかりません。整骨院の予約システムは無料でいい?で選び方を整理しています。
② チラシを配ったが、受け皿がない
開業時にチラシやポスティングを行う院は多いのですが、チラシを見た人の多くは、その場では来院しません。まず院名で検索します。
そこで何も出てこなければ、そこで終わりです。チラシを撒く前に、検索して出てくる状態をつくっておいてください。
③ 内覧会をやったが、予約につながらない
内覧会は有効な手段ですが、来場者を「見に来ただけの人」で終わらせないことが肝心です。
その場で次回の予約を取る導線を用意しておくこと。QRコードから予約ページに飛べるようにしておくだけでも違います。
開業前チェックリスト
手続き
- 施術管理者の要件(実務経験・研修)を満たしているか確認した
- 施術管理者研修の受講日程を押さえた
- 工事前に、図面を持って保健所へ事前相談した
- 開設届の様式と必要書類を保健所で確認した
- 開設届の副本を用意し、受付印をもらう段取りをした
- 地方厚生局への受領委任の申出方法を確認した
- 税務署への開業届、青色申告承認申請書の期限を確認した
集客の準備
- 院名が広告規制上、問題ないか確認した
- ドメインを取得した
- Googleビジネスプロフィールの登録手続きを始めた
- ホームページに載せる項目(上のリスト)を決めた
- 外観・院内・院長の写真を撮った
- 開業1ヶ月前にホームページを公開できる段取りになっている
- ネット予約を、開業日より前に受け付けられる状態にした
最後に
開業準備で一番つらいのは、やることが多すぎて、何が後回しにできて何ができないのか分からなくなることだと思います。
後回しにできないのは、時間が固定で決まっているものです。研修の日程、はがきの郵送、検索に出るまでの期間。これらはお金を積んでも短縮できません。
逆に、内装のこだわりや備品の選定は、開業後にも直せます。
時間で決まるものから先に着手する。これだけ意識していただければ、開業日の景色はかなり変わります。
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※ 本記事は2026年8月時点の情報をもとにしています。手続きの要件・様式・期限は変更される場合があり、また自治体によって運用が異なります。実際の手続きは、必ず管轄の保健所・地方厚生局・税務署にご確認ください。