整骨院を完全予約制にする前に
決めておく5つのこと
枠の長さ、同時に何人受けるか、当日の飛び込みをどうするか。 この5つは、予約システムを触る前に紙の上で決まっていないと設定できません。 順番に整理します。
その前に:完全予約制・予約優先制・受付順の違い
言葉が混ざりやすいので、先に整理します。どれが正しいという話ではありません。
| 形 | 受け方 | 向いている院 |
|---|---|---|
| 完全予約制 | 予約のある方だけを受ける | 施術時間が長い/1人で回している/自費中心 |
| 予約優先制 | 予約が先。空いていれば当日も受ける | 保険中心で当日の来院が多い/立地が路面 |
| 受付順 | 来た順に受ける | 1回の施術が短く回転が速い |
「完全予約制にします」と掲示したのに当日の飛び込みを受けている院は、実態は予約優先制です。 ここが曖昧なままだと、患者さんの側に「行けば入れる」という記憶が残り、予約が定着しません。 どちらにするかを先に決めて、掲示と院内の説明を揃えてください。
① 枠の長さを、メニューごとに決める
予約システムはどれも「1枠=何分」で動きます。 施術時間だけで決めると、必ず足りなくなります。着替え、問診、電療の待ち時間、会計、次回予約の案内。 これらが枠の外にはみ出すと、2件目から遅れが積み上がります。
先に紙に書き出すのは、この3つです。
- 施術そのものの時間(メニュー別)
- 前後にかかる時間(問診・着替え・会計・カルテ記入)
- 初検と再検で違う分(初回は問診が長い。同じ枠にすると初日から崩れます)
初回だけ枠を長くできるかは、システムによって差が出るところです。 メニューを「初回用」と「2回目以降用」に分けて、それぞれ別の所要時間を持たせる形が現実的です。
② 「人」で数えるか「ベッド」で数えるか
ここが整骨院でいちばん引っかかるところです。 施術者が1人でも、ベッドが2台あれば同じ時間に2人を受けられます。 電療をかけている間に、隣のベッドで手技に入る。実際にそう回している院は多いはずです。
ところが多くの予約システムは、枠をスタッフに紐づける作りになっています。 そのままだと「施術者1人=同時1件」になり、実際には受けられる時間帯が予約画面では埋まって見えます。
同じ時刻に何人まで受けるかを、時間帯ごとに数字で決めてください。 「9〜12時は2人まで、14〜18時は3人まで」のように書き出せていれば、 どのシステムでもその形が作れるかどうかを試す段階で判断できます。
スタッフ以外のリソース(設備・ベッド)を登録できるかは、サービスによって扱いが違います。 無料で試せるうちに、実際の枠を1週間ぶん作ってみるのが確実です。 各社の作りは予約システムの選び方と比較のポイントにまとめています。
③ 当日枠を残すかどうか
完全予約制にした院がいちばん失うのは、「今日ぎっくり腰になった人」です。 急性の患者さんは、明日の予約ではなく今日診てもらえるところを探します。 ここを取りこぼすと、紹介の起点が減ります。
対策は、予約制をやめることではなく当日枠をあらかじめ空けておくことです。
- 午前と午後に1枠ずつ、当日分として空けておく
- 前日まではネット予約から埋まらないようにする(当日になったら開放する、または電話専用にする)
- 埋まらなかった当日枠は、カルテ整理や連絡の時間に充てる
ネット予約で「何日前から受け付けるか」を設定できるかは、確認しておくところです。 受付開始のタイミングを枠ごとに変えられれば、当日枠の運用はそのまま組めます。
④ キャンセルと変更の期限を、先に文章にする
完全予約制は、1枠のキャンセルがそのまま空白になります。受付順のように次の人が繰り上がりません。 だからこそ、期限と連絡先を先に決めておく必要があります。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 変更・キャンセルの期限 | 前日の◯時まで/当日は電話のみ |
| 連絡の手段 | 予約確認メールのキャンセルリンク/電話/LINE |
| 無断キャンセルの扱い | 次回予約時に説明する/掲示に書く |
| 誰が枠を戻すか | 自動で空く/受付が手で戻す |
患者さんが自分でキャンセルできる導線があるかどうかで、空白の埋まり方が変わります。 電話でしか受け付けていないと、言いにくさから連絡が来ないまま来院しない、という形になりがちです。 このあたりはドタキャン対策|予約システムでできること・できないことで詳しく書きました。
⑤ 電話予約とネット予約で、同じ枠を見る
完全予約制でいちばん起きてはいけないのがダブルブッキングです。 原因のほとんどは、電話で受けた予約が紙の予約表に、ネット予約が管理画面に、別々に入っていることです。
避ける形は2つしかありません。
- 電話で受けた予約も、その場で管理画面に入れる(枠の在庫を1つにする)
- ネット予約に出す枠と、電話で受ける枠を最初から分けておく
紙とネットの二重管理は、必ずどこかで事故になります。 電話が主体の院がネット予約を足すときの進め方は、 電話予約だけで回している院が、ネット予約を足すときにまとめています。
完全予約制にして良くなること・きつくなること
| 内容 | |
|---|---|
| 良くなる | 待合の混雑が減る/1人あたりの施術時間が読める/施術の中断が減る/スタッフの休憩と退勤時刻が決まる/来院数の見通しが立つ |
| きつくなる | 当日の飛び込みを取りこぼす/キャンセルがそのまま空白になる/枠の設計を間違えると1件目から遅れが積み上がる/電話とネットの二重管理で事故が起きやすい |
きつくなる側は、4つとも事前に決めておけば防げるものです。 逆に言えば、決めずに始めると4つとも起こります。
移行の進め方
- いきなり全面移行しない。まず時間帯を区切って予約枠にする(午前だけ、など)
- 掲示と説明を揃える。院内の掲示、ホームページ、Googleビジネスプロフィール、電話の応対
- 既存の患者さんには、来院時に次回予約を取ってもらう形から始める
- 1ヶ月は当日枠を多めに残す。足りているかを見てから絞る
- 予約が入らない時間帯を記録する。枠の位置が実態と合っていない可能性があります
ネット予約を入れたのに使われない、という相談は少なくありません。 原因のほとんどは枠の設計か導線です。 ネット予約が使われない、よくある6つの原因もあわせてご覧ください。
まとめ
- 完全予約制か予約優先制かを先に決めて、掲示と応対を揃える
- 枠の長さは、施術時間ではなく前後を含めた実時間で決める。初回は別メニューにする
- 同じ時刻に何人受けるかを、時間帯ごとに数字で決める。人で数えるかベッドで数えるか
- 当日枠を先に空けておく。急性の患者さんを取りこぼさないため
- キャンセルの期限と連絡手段を文章にする。患者さんが自分で取り消せる導線があると空白が埋まりやすい
- 電話とネットで枠の在庫を1つにする。二重管理はダブルブッキングの原因